バンブーブレード最終話を見終えて

「バンブーブレード」はもともと犬居サンに勧められて、アニメ化決定の前から原作コミックを楽しんでいました。
そしてアニメ版脚本の倉田英之さんも前から好きな脚本家だったので、初回から注目して見ていたのですが、
終わってみると期待以上の見事なアニメ化だったと思います。
そこで先日のガンダムOOに引き続き、またもやテーマに分けてツラツラと感想を書いていきたいと思います。

その1.バンブーブレードのストーリーに起承転結はあったのか?

ガンダムOOに引き続きまたこれですw
「起」は第1話からタマちゃんとミヤミヤが入部する4話まで。
「承」は原作に沿って練習試合したり、大会に出たりして部員達の交流を描いていった5話から18話まで。
「転」は鈴木凛とキャリー西川が登場した19話からのアニメオリジナル展開。
「結」は25話と26話。
という感じにわけてみました。

OOの時は24話まで見た段階で「これはひどい」と思ったと書きましたが、
バンブレの場合は25話まで見て「これは目をつぶってても着陸成功間違いなし!」と思いました。
なぜなら25話を終えた段階でタマちゃんをはじめとする剣道部部員達それぞれの成長をほぼ描き終えていたからです。
これはもう実質的に25話が最終話。あとは虎侍さえ戻ってくれば、その他はエピローグのようなものなので、
安心して26話を迎えることが出来ました。

結論としてはバンブレは全話を通しての「起承転結」がきっちりと出来ていたと思います。
「承」の部分にかなりの話数を割いて、各キャラクター達のストーリーをきちんと描いてフリを作り、
「転」「結」で各キャラクターにそれぞれちゃんとオチをつける…。
これがバシッと決まっていたので見ていて生理的に気持ちよかったです。

その2.最初にして最大の難関

ここでは初期にさかのぼって、最初のアニメオリジナル展開となった「ミヤミヤのタバコ問題」について考えたいと思います。
ミヤミヤというキャラの二面性を表現するために、原作では「タバコを吸う」という設定が用いられました。
しかしアニメでは、学生がたばこを吸うというシーンがおそらくテレビ局の倫理基準的にNGだったのか、
その設定は使われませんでした。
それでは、どうやってミヤミヤの腹黒キャラぶりを表現するのか?
さらに原作ではタバコを吸っているのをとがめた鞘子との因縁がありましたが、その件はどうするのか…?

結局アニメでは「ダン君をいじめた外山と岩佐に復讐をしかける」
「自転車が暴走してぶつかってきた鞘子に復讐を阻止されて因縁が生まれる」という風に改変されました。
当時、この改変には否定的な意見もありましたが(正義感の強い鞘子がこれでは単なる迷惑なドジ娘にすぎないとか)、
かといってこれ以上の方法があるのか?といわれると正直難しいと思いました。

兎も角、この問題をなんとか上手い具合にクリアーできたことで、後のアニメオリジナル展開に弾みがついたのでは
ないかと僕は思っています。

その3.アニメオリジナル展開

その1にも書いたとおり、アニメは第19話から原作を追い越してオリジナル展開に突入しました。
オリジナルキャラの登場など、不安な要素もありましたが、終わってみれば大成功だったと思います。
それは“アニメ版”バンブーブレードを完結させるために「キャラの成長を描けた」から。

例えばタマちゃんは最初から剣道が強く、性格的にもぼけーとしているので成長させにくいキャラだったと思います。
そこで鈴木凛というタマちゃんより剣道が強く、趣味の面でもブレイバーではなくシナイダーを認めているというライバル
キャラを登場させました。
そしてタマちゃんは彼女に一度負け、自暴自棄になり部活をやめかけ、剣道が好きな事に気付き、再戦でリベンジ成功という、
まさに少年漫画の黄金パターン的な成長を遂げたのです。

更にアニメはその他の部員達の成長もちゃんと描きました。
ミヤミヤは剣道初心者で、腹黒というタマちゃんとは正反対なキャラながら、
キャリー西川というライバルキャラに負け、自暴自棄になり部活をやめかけ、
剣道が好きな事に気付き、再戦でリベンジ成功という、タマちゃんと同じ黄金パターンで成長しました。
ここら辺は見てて「うまいなぁ」と思いました。

入部が遅く影が薄かった東聡莉も、ミヤミヤを一喝するというシーンで成長をあらわしました。

そして原作では作者自らがネタにするほど、扱いが悪い男子キャラたちの成長も描かれました。
勇次は自暴自棄になっていたタマちゃんに、剣道が好きな事を気付かせ、復活をうながすという重大な役目をはたしました。

ダン君は外山にリベンジをはたすことで、2話での因縁をまさかの解消。
外山と岩佐という忘れ去られていたキャラにまで、おいしいシーンを与えるというおまけ付きでした。
これは見てて「すごいなぁ」と思いました。

キリノ、鞘子、そして虎侍は先輩と先生という立場ですので、他のキャラほどわかりやすい成長はなかったと思います。
ただ最終話のキリノが虎侍に泣きながら抱きつくところは、見てて嫉妬しながらも「良いシーン」だなぁと思いました。

その4.第26話「“それから”と“これから”」

その1でも書いたとおり第25話で物語のヤマ場をほとんど終えていたため、
どう着地しても無難に終わらせられる状態だった最終26話。
そこで、スタッフ(主に脚本の倉田氏?)は三つの仕掛けを用意していました。

まずひとつは、凛とタマちゃんがブレイバーの映画を観に行くシーン。
正直、25話でタマちゃんが凛に試合で勝ったことで2人の因縁は描き終えていたと思っていたので、
もうひとつの「ブレイバーとシナイダー、どっちが好き?」という因縁にまでオチをつけてくるとは思いませんでした。
そして、アニメスタッフがやたらとこだわり続けたブレイドブレイバーも無事に最終話まで登場することが出来ましたw

2つ目は「外山と岩佐の姉弟の登場」。
これまた外山と岩佐の因縁はダン君との対決で解消していたので、
ここで姉弟を出してきて、キリノ、鞘子と外山たちとの因縁を解消(退部問題に関しては彼女たちが外山たちと
直接に対峙して解決したわけではなかったので)するとは思ってもみませんでした。
キリノが外山たちの姉弟が自分達の前に現れ、剣道部に入ろうとしてる事を喜び「今日はいい日だね」と
うれしそうに言った時、彼女が外山たちが辞めた事をそれでもずっと気にしていたことが分かって
グッときました(個人的に26話で一番好きなシーンです)。

3つ目は「榊心(さかきうら)」の登場。
榊は原作のタマちゃんのライバルキャラなわけですが、天才剣士、そしてタマちゃんと同じくオタクというキャラなので、
鈴木凛は榊をアニメ用にアレンジした同一のキャラだと、僕は思い込んでいました。
しかし最終話では榊が登場したことで別人であることが判明しました(まぁそれ以前に原作でも
別キャラということがさらっと描かれてたのですが)。
最後の榊とタマちゃんとの出会いは、二期への布石なのか?続きは原作でというメッセージなのか?
はたまた原作ファンへのマニアックなサービスなのか…?

それは現段階では分かりませんが、もし二期をやるというならば原作がきちんと終了してからにして欲しいものです。

その5.脚本家「倉田英之」

アニメ版バンブーブレードの脚本を手がけた倉田英之氏は、ガンダムOOの脚本の黒田洋介氏と同じ「スタジオオルフェ」に
所属している脚本家。代表作は「R.O.D」「かみちゅ」「ガンソード」。

DVDのオーディコメンタリー等でのトークや、手がけた作品のマニアックな設定からかなりのオタクであることは分かっていましたが、
今回バンブーを全話観て「“王道”を書ける脚本家」だということが、改めて思い知らされました。

思い返せば「R.O.D」にしても「かみちゅ」にしても設定こそオタク好みのするマニアックなものでしたが、
そこで描かれた“物語”はどこか懐かしい感じのする“王道の物語”だったと思います。
そして、このバンブーブレードもスポ根、青春、キャラの成長などを、実に真っ当に描き切った秀作でした。

次回作「かんなぎ」では、あの山本寛(監督としての域に達したのか?)とタッグを組むという事なので期待が止まりません。

ちなみに脚本:倉田英之 漫画:okamaのウルトラジャンプコミックス「CLOTH ROAD-クロスロオド」も、設定こそ奇をてらった
ものですが、物語は少年と少女の成長と旅を描く(やはりどこか懐かしい香のする)王道のジュブナイルもので面白いです。


…またもや長々と書いてしまいましたが、まぁ僕ごときがうだうだと語るまでもなく、タマちゃんが冗舌に語ってくれてますw


(追記)その6.絵について

主に脚本関係についての感想ばかりになってしまったので、絵についての感想を書き足し。

連続アニメでは作画担当者の違いで話によって絵柄が変わることがよくありますが、
バンブレはそういったことは少なかったように思います。

もうひとつ。連続アニメでは、全話中の何話か絵がとても綺麗な回があります(いわゆる神回といわれるやつです)。
おそらく全体のストーリーの中で重要な回を決めて、そこに戦力を集中して作ってるのでしょう。
ひとつの作戦としてそれは大いにアリだと思います。
しかしそういった神回があるということは、そのしわ寄せを食った可哀想な回が出来るということです。

一方、バンブレは作画的な神回も無かったかわりに、可哀想な回も無かったと思います。
これはあえて全話「そこそこな」クオリティで仕上げ、回によるムラをなくそうとする作戦だったんではないでしょうか?
(少ない予算で家計をうまくやりくりするお母さんみたいな人がきっといたんでしょうw)

バンブレが全話通して安心して観れたのは、脚本のおかげだけではなく、絵の方も無理をせず常に安定していた事も
重要な要因だったと思います。

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